不動産の価値を下げる鉄道系不動産会社

とある郊外へ伸びる私鉄沿線の中で、その沿線の中でも古くから宅地開発が行われ、それゆえにそれなりのステータスを持つ地域があったとします。
当然、当初の開発は、その私鉄企業が担い、徐々に周辺地域も開発され、立派な宅地地区を形成しています。実際、ある地域では、古くからの宅地のある駅の西側と、準工業地帯も混ざる東側では、同じような戸建物件でも価格に1.3倍の差があります。
この古い住宅地の中には、面積で400平方メートルを超える住宅が多数存在します。
この古い宅地が売り出されたとき、どのように売り出されるかというと、多くの場合、「古家を壊し、宅地として手の届きそうな価格帯になるように分割する」ことになります。だいたい、約100平方メートル単位に分割されることが多いようです。
さて、その結果、100平方メートル程度の住宅と非常に広い300〜400平方メートル程度の住宅が入り混じります。周辺を歩くと、町としての一体感がなくなっていることがわかります。いきなり玄関のある家と、やや前庭を経て玄関にいたる家、垣根は低木という家と、アルミの柵やブロック塀という家・・・。
地域の価値は確実に下がります。
しかも、その下げる行為をしているのが、もともと沿線を開発した私鉄系不動産会社であることも多いのです。
別の地域では、少子化のために廃校となった小学校をその地域の私鉄系不動産会社が買収し、マンションを建てていました。周辺は、戸建地域。マンションなど半径1キロ以内にはまったくありません。もちろん反対運動は起こりますが、法的に問題がなければ建てるという姿勢を終始崩さず、容積率をほぼ使い切ってマンションは建ってしまいました。
これは、過去に形成した「沿線価値」を食いつぶす行為に他ならないと私は思います。沿線の価値を保つためには、町並みを壊さない努力が必要です。なぜ、グループ企業が価値を壊す行為をするのでしょうか。
別の地域の鉄道系不動産会社の事業部長は、「大手マンションメーカーは、法律さえクリアすれば何でも作ってしまうが、沿線に根を張る私たちにそれはできない」とはっきりと言っていました。そのような気概のある会社でなければ、沿線価値を保ち続けることはできなくなります。
はたして、どれくらいの鉄道系不動産会社がそのような意識をもっているでしょうか。