川崎市営バス

 1月20日の神奈川新聞によると川崎市の『「市バス事業経営問題検討会」は十九日、経営改善策などを盛り込んだ検討結果を阿部孝夫市長に答申した』らしい。
 その中で「当面公営の役割を維持しながらも、民間事業者と競合する路線からの撤退を視野に健全化計画を検討することを求めている」という部分に引っかかりを感じました。

<競合していなければもうかるのか?>
 民間事業者は、「利益が出るからその路線にバスを走らせている」わけで、競合する路線こそ、利益の取れる路線に違いありません。「公営の役割」とは、交通弱者に対する交通権の維持を保障することであり、不採算でも路線を維持することにあるのではないでしょうか。
 とすると、「不採算路線でも、交通弱者を救いつつ、民間事業者が儲かるといっている路線からも撤退する」と言っているようなものです。「利益を出す路線でがんばる」気は全くないようです。
 「市バス事業が民間並みのコストによっても赤字となる不採算の生活路線や先駆的な役割を持つ路線など、「公営」バス事業の意義・役割に基づいて、市バス事業が実施するサービス相当額については、「公共として補償すべき路線」として整理すべきである」としています。それは、その通り。
http://www.city.kawasaki.jp/82/82keiei/home/keiei/tosin.pdf
 しかし、新聞の論調も赤字路線は「大半が民間と競合してる」ことに赤字の理由を求めるかのような書き方をしていますが、そんなことはないと思うのです。独占路線なら儲かるわけではなく、利用者がいる路線かどうかがポイントです。競合路線こそ利用者がたくさんいるはずです。
 答申では「市バス路線網については、「公営」としての役割を果たすことは前提であるが、効率化の観点からと同時に利用者ニーズの観点からも、見直しが必要である。例えば、民営バス事業者との競合路線、特に、競合率が高くかつ著しく輸送分担率が低い路線や、長距離路線などである。また、需要が著しく少ない路線については、ダイヤの見直し等のほか、そのあり方・必要性についても検討すべきである。なお、路線の新設にあたっては、民営並みのコストでも赤字になる路線を新たに増やすことのないよう、需要を慎重に判断すべきである」と書かれています。

<競合路線にこそ、バスを投入>
 公営である以上、赤字の路線を抱えることも仕方ありません。しかし、民間が黒字になる路線からわざわざ撤退する必要もないと思います。「民業圧迫」といわれる筋合いもありません。職員の給与水準が民間より高いのは問題ですが。ダイヤや車両、安心感のある運転、安定輸送など競争すべき土俵を変えていくことが本来の姿でしょう。競争して、民間より良いサービスを提供し、その路線で選んでもらわなければ、他のところでも選ばれません。